新たなイノベーションの発信地『大学発ベンチャー』とは

大学発ベンチャーとは?

大学発ベンチャーは、大学に潜在する研究成果を掘り起こし、新規性の高い製品により、新市場の創出を目指す「イノベーションの担い手」として高く期待されるものです。

経済産業省

大学発ベンチャーは経済産業省によって上記のように定義されている。2020年度調査において確認された大学発ベンチャーは2,905社あり、前年度比で2,566社から339社増加し、企業数及び増加数ともに過去最高を記録している。

引用元:https://www.meti.go.jp/press/2021/05/20210517004/20210517004.html

大学発ベンチャーの始まり

大学発ベンチャーは2002年に経済産業大臣であった平沼赳夫が政策の一つとして掲げた「大学発ベンチャー1000社構想(2002年度から5年間で1000社にするというもの)」に始まる。経済産業省が作成した「平成20年大学発ベンチャー基礎調査」によると、2006年度末までに1627社、2008年度末までに1809社が設立された。大学発ベンチャーによる市場規模の合計はおよそ2700億円、雇用創出はおよそ17万人に達した。しかし、大学発ベンチャーのうち43.2%(2年分のデータが入手できた273社の分析)は研究開発段階にあり、製品化や事業化には至っていないとされる。

大学別大学発ベンチャーの企業数

引用:https://www.meti.go.jp/press/2021/05/20210517004/20210517004.html

大学別の大学発ベンチャー企業数は東京大学が三年連続で最も多く、続いて京都大学、大阪大学、筑波大学、東北大学など国立大学を中心に増加傾向にある。

大学発ベンチャーのメリット・デメリット

大学発ベンチャーのメリット

  1. 技術的な優位性
  2. 参入障壁が高い

大学発ベンチャーのデメリット

  1. ビジネスの経験不足
  2. 実装までの期間が長い
  3. 小規模な企業が多い

大学発ベンチャーの5つの分類

(1) 研究成果ベンチャー

大学で達成された研究成果に基づく特許又は新たな技術若しくはビジネス手法等を含むノウハウを事業化する目的で新規に設立されたベンチャー。

(2) 共同研究ベンチャー

大学以外の技術又はノウハウを事業化するために設立されたものであって設立後5年以内に大学と共同研究等を行ったベンチャー。

(3) 技術移転ベンチャー

既存の事業を維持させるため又は発展させるために設立されたものであって設立後5年以内に大学法人から技術移転等を受けたベンチャー。

(4) 関連ベンチャー

⼤学からの出資があるなどその他、⼤学と深い関連のあるベンチャー。

(5) 学生ベンチャー

⼤学と深い関連のある学⽣ベンチャー。

大学発ベンチャー事例18選

【事例1】Spiber株式会社

Spiber株式会社は山形県鶴岡市に拠点を置く慶應義塾大学先端生命科学研究所発のベンチャー企業である。クモ糸の特性を活かした人工構造タンパク質の新素材「QMONOS」の研究・開発を行っている。

【事例2】株式会社サイフューズ

株式会社サイフューズは東京都文京区本郷に拠点を置く東京大学発のベンチャー企業である。細胞を3D積層するプラットフォーム技術を生かした再生医療製品およびドラッグディスカバリー技術の研究開発を行っている。

【事例3】クオンタムバイオシステムズ株式会社

クオンタムバイオシステムズ株式会社は大阪府大阪市淀川区に拠点を置く大阪大学発のベンチャー企業である。革新的1分子DNA・RNAシークエンサーの開発を行っている。

【事例4】CYBERDYNE株式会社

CYBERDYNE株式会社は茨城県つくば市に拠点を置く筑波大学発のベンチャー企業である。サイバニクス技術に関連する研究開発、製造、販売、保守管理を行っている。

【事例5】マイクロ波化学株式会社

マイクロ波化学株式会社は大阪府吹田市に拠点を置く大阪大学発のベンチャー企業である。独自開発したマイクロ波プラットフォームを使用し、研究開発からエンジニアリングまでワンストップでソリューションの提供を行っている。

【事例6】株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナは東京都港区に拠点を置く東京大学発のベンチャー企業である。藻の一種のミドリムシ(学名:ユーグレナ)を活用した食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究などを行っている。

【事例7】株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル

株式会社ディジタルメディアプロフェッショナルは東京都中野区に拠点を置く法政大学発のベンチャー企業である。グラフィックス・AIを活用した製品開発を行っている。

【事例8】株式会社セルシード

株式会社セルシードは東京都江東区に拠点を置く東京女子医科大学発のベンチャー企業である。細胞シート工学という再生医療技術を基盤とした医療用細胞シートの開発を行なっている。

【事例9】株式会社リプロセル

株式会社リプロセルは神奈川県横浜市港北区に拠点を置く京都大学・東京大学発のバイオベンチャー企業である。ES/iPS細胞分野で高い技術力を有しており、iPS細胞用の研究試薬事業をはじめ、創薬支援や再生医療関連の事業を行っている。

【事例10】株式会社イーベック

株式会社イーベックは北海道札幌市中央区に拠点を置く北海道大学発のベンチャー企業である。医薬品向け完全ヒト抗体の製造・販売やヒト末梢血からヒトモノクローナル抗体を作製する技術の開発を行なっている。

【事例11】アンジェス株式会社

アンジェス株式会社は大阪府茨木市に拠点を置く大阪大学発のバイオベンチャー企業である。難治性疾患を対象に、遺伝子治療薬、核酸医薬、DNAワクチンを遺伝子医薬品として研究・開発から実用化まで行っている。

【事例12】リブセンス

株式会社リブセンスは東京都品川区に拠点を置く早稲田大学発のベンチャー企業である。『転職会議』『転職ドラフト』『マッハバイト』といった人材領域と『イエシル』『イエシルコネクト』といった不動産領域などのウェブサイト運営を行っている。

【事例13】株式会社サインポスト

株式会社サインポストは大阪市中央区に拠点を置く大阪大学発のベンチャー企業である。医療領域、ヘルスケア領域、研究領域で遺伝子検査サービスの提供を行っている。

【事例14】株式会社ユーザーローカル

株式会社ユーザーローカルは東京都品川区に拠点を置く早稲田大学発のベンチャー企業である。ビッグデータ分析システムの研究開発やソーシャル分析ツールを開発提供などを行っている。

【事例15】株式会社PKSHA Technology

株式会社PKSHA Technologyは東京都文京区本郷に拠点を置く東京大学発のベンチャー企業である。機械学習や深層学習を用いた機能特化型のアルゴリズムモジュールを提供するソリューション事業や、アルゴリズムをベースにしたSaaS型ソフトウェアプロダクトの事業などを行っている。

【事例16】株式会社Gunosy

株式会社Gunosyは東京都渋谷区に拠点を置く東京大学発のベンチャー企業である。「グノシー」や「ニュースパス」等の、情報キュレーションサービス・ニュース配信アプリを開発・運営している。

【事例17】サンバイオ株式会社

サンバイオ株式会社は東京都中央区に拠点を置く慶應義塾大学発のベンチャー企業である。再生細胞医薬品の開発・製造・販売を行っている。

【事例18】株式会社ACSL

株式会社ACSLは東京都江戸川区に拠点を置く千葉大学発のベンチャー企業である。産業向けドローンの開発・販売を行っている。

Deep Techとしての大学発ベンチャーに期待

大学発ベンチャーは、高い技術力を有する研究機関解決困難な社会課題をつなぐ取り組みであり、カーボンニュートラルSDGsが注目される今より一層その需要は高まっている。

参考文献